今、大型補助金で大きく騒がれている事業再構築補助金。M&Aで使えるのは事業承継・引継ぎ補助金であり、この補助金はM&Aとは関係ないのですが、M&Aを考えている方には応募をオススメしたいです。それが仮に残念なことに不採択であったとしてもオススメです。また、ご自身が売り手側であっても、または買い手側であってもオススメです。その理由は3つあります。
① SWOT分析が必須
事業再構築補助金を申請するには、SWOT分析を事業計画書の中に入れる必要があります。M&Aでは互いの事業のシナジー効果が最大の目的です。そのときにSWOT分析はいろいろな気付きが得られます。
毎日忙しく仕事をしていると、自らの会社がどんな環境に身を置き、どんな特徴を持っているのか改めて整理する機会はそれほどないはずです。これほど便利なフレームワークもないし、補助金採択に向かって、何度も何度も練り直すことで研ぎ澄ましの効果が期待できます。
② 財務分析を行うから
応募フォームの中に、収益計算という項目があります。ここには直近と今後5~6年の損益計算書情報を入力します。今後、自社の収益性がどのように推移していくのかを整理できるでしょう。
また、ローカルベンチマークというツールをご存知でしょうか。経産省が運営するミラサポというwebサービスの中の1つで、決算書情報などを入力することで自社の健康診断ができます。私が応募したときの事業再構築補助金にはこれが必須でした。
よく中小企業のオーナー社長は、PL(損益計算書)だけしか頭になかったり、そもそも決算書が税金を払うためだけにしか利用できてない人も多いと言われます。収益性、効率性、生産性、安全性などをここで知ることで、自分が売り手になったとき、買い手にとって自社が魅力的な健康状態なのかをチェックができます。
ちなみにローカルベンチマークは何も財務だけのツールではありません。非財務情報も含めて、企業の健康診断をしてくれます。診断をされると、たくさんの気付きを得られるでしょう。
③ 企業情報を入力するから
事業や財務が優れていても、そもそもM&Aをできないこともあります。例えば、株主が分散していて株を売るコンセンサスが取れない例がその一つです。
事業再構築補助金では、株主一覧やその比率、従業員数などを入力し、履歴事項全部証明書などを取得したりします。最も初歩的情報であり、M&Aの一歩目には欠かせない情報ですね。ここで注意すべきは単なる入力で終わらせないことです。これは作業ではなく、気付きを得る仕事です。履歴事項全部証明書をただスキャンするだけではいけません。監査役を設置している会社なのか、取締役は何人なのか、誰がどんな経緯で着任しているのか、書かれていることをじっくり見れば気づきは多いものです。事業承継に障害になりうる要素はないかイメージしながら入力を進めましょう。
以上、事業再構築補助金がM&Aを考えるにあたってオススメな理由を書きました。
事業再構築補助金が不採択になって、「仕事を犠牲にしてまで準備したのに、準備に要した1ヶ月を棒に振った」という人がいますが、決してそんなことはないと思います。自分の会社のことを立ち止まってこれだけ考える機会を得た、これも大事な仕事です。不採択であったとしても、やっただけの効果はあるのではないでしょうか。もちろん、応募なさる方は採択をお祈りしています。
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