M&Aを決断したら、お相手の候補リストとして、いわゆるロングリスト(候補になりうるリスト)やショートリスト(より絞られた候補リスト)を作っていくことがあります。
しかし印刷会社の場合、事業形態によってはシナジー効果が発揮できる相手の数が、それほど多くないはずです。お相手の候補者が少ないため、交渉先リストといっても片手でおさまることもあるため、始めから自社とお相手とどのようなシナジーがありそうかイメージしておくとよいでしょう。
そこで印刷会社の形態を4分類に分けてみて、どのようなシナジーがありそうかを考えてみました。(あくまで私見ですので、下記以外にも様々なマッチングがありえますので、参考としてお捉えください。)
印刷会社のタイプ別M&Aシナジー効果
対象会社(売り手の印刷会社)のタイプ
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①下請け型印刷業
(仲間仕事受注型)
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②地域特化型印刷業
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③業種特化型印刷業
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④ネット通販型印刷業
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対象会社の顧客基盤
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広告業・印刷業・出版業がメイン
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地域の法人全般
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全国の特定業種
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全国の印刷広告業・小規模事業者
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買い手の目的
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既存路線の強化
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新販路・新事業
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新販路・新事業
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既存強化・新規販路
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シナジーが出そうな買い手
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印刷業・広告業
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a.新たな顧客をつかむため、その地域に進出したい企業(法人営業タイプの企業など)
b.同一エリアの企業でクロスセルになる企業 (例.広告会社、web会社など)
c.既存の取引先(川上と川下が統合する垂直統合)
d.同業である印刷会社(水平統合)
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a.関連するあらゆる企業
b.既存の取引先(川上と川下が統合する垂直統合)
c.その特定領域の同業他社(水平統合)
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関連するあらゆる企業
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M&AやPMIの難易度
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多くの場合買い手が同業になるので、実態把握をしやすくスムーズ。機械や工場、工場作業者など獲得したい会社にはマッチング度は高いが、今後のデジタル化で需要は減る傾向にある。
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a.人材、OA機器、システム開発など法人サービスの異業種がメインとなるが、売り手の印刷工場部分が不要となったり、御用聞きタイプの営業スタッフが新たな商材を扱えるかのリスクが大きい。
b.例えば、地元のフリーペーパー会社が地元の印刷会社を買収するなどがあり得る。新たな顧客獲得だけが狙いでなく、対象外社の印刷の内製化や機械稼働率アップも期待できる。
c.これまでの取引の中で、よくわかっている間柄なので予測不可能なリスクは少ない。ただし、競合に営業できなくなるなどM&A後に対象会社の事業が縮む可能性もある。
d.隣接都道府県の同業が買い手になるとシナジーが高そう。それほど業態を変えることなく、売上が上がる可能性が高い。
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a.互いにリスクが高い、地域も業種も違う買い手になることが多いため、たくさん調べたり、成約までに時間がかかったりリスクを互いに背負う。
b.これまでの取引の中で、よくわかっている間柄なので予測不可能なリスクは少ない。ただし、競合に売れなくなるなどM&A後に対象会社の事業が縮む可能性もある。
c.よくわかっている市場なので、リスクは少ないし、あらゆるリソースを統合してスケールメリットや効率化が期待できる。
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