M&Aも補助金が使える時代です。
後継者不足による廃業は、雇用の受け皿やノウハウ・競争力を無にしてしまい、国力を下げる要因となっています。最近は、国もM&Aによる事業承継を支援しています。
画期的なのは、補助金としての支援が行われ始めたことです。
自分が使ってみての感想を言えないと意味がないので、
以下、私が利用したか、私のアドバイザリー契約先企業さんが利用した補助金に限ってレビューします。
INDEX
令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」
この中に、専門家活用型という類型があります。中小企業庁HPによれば補助金概要は以下の通りです。
・補助率:2/3
・補助上限:400万円(上乗せ額:200万円)
・M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用を補助します。
(補助対象経費:M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用 等)
以下、私のレビューです。
良いな思った点
補助金は採択されれば、返済不要な資金です。こんなありがたい話はありません。
①M&Aアドバイザーに対する報酬に使える
類型タイトルが「専門家活用型」の文字通り、まずこの補助金が主眼に置いているのがM&Aアドバイザーに対する報酬の支払いの補助です。
M&Aアドバイザーの報酬として有名なレーマン方式では、取引価格が5億円未満のときは報酬はその5%になっています。
しかしながら、M&Aアドバイザーは通常最低報酬を設定していて、少額の取引価格でも報酬は高額になります。
よって、アドバイザーに報酬が600万円かかったときに、400万円を補助してくれるのは、本当にありがたい補助金だと思います。
②申請が難しくない・負担も少ない
ものづくり補助金や事業再構築補助金を書いた経験がある方ならばご存知ですが、補助金によっては事業計画書を何枚も書き込む必要があります。
私も、事業再構築補助金やものづくり補助金には、申請に1ヶ月まるまる使うというようなことがありました。
しかし、本補助金は情報さえ揃っていれば1日で申請できます。
(途中、書き直しや空欄になってしまう箇所もあると思うので、2週間ほど前から着手したほうが良さそうです。オンライン画面に入力しても一時保存ができるようになっていますので、途中でやめても問題ありません。)
書き込む欄の数はすごく多いですが、クリックで選べたり、単純な入力も多いです。たまに文章で書き込む欄もありますが、文字数をたくさん書き込む必要はありません。
ものづくり補助金や事業再構築補助金の方が、これの10倍以上労力がかかると思います。
③買い手側も補助対象
事業承継の支援という意味からいうと、売り手側に支援をする意味合いが強そうですが、事業を引き継ぐ買い手側も申請が可能です。
また、M&Aの事業承継では、買い手は売り手よりも大きな企業になることが多いですが、本補助金では買い手も売り手と同じ補助上限額が設定されてます。
資金を持っていると思われる買い手にも手厚い補助金だと言えます。
④期限がある
売り手から見れば、買い手にも補助対象となるため、買い手が見つけやすくなります。さらに大きいのは、補助金をもらうには期限があります。つまり、M&Aのクロージングが早まる力がはたらきます。
補助金を獲得の買い手であれば、長い交渉ではなく、期間内に成約することを目指すので、早く引き継ぐ相手が決まる可能性があります。
使いにくいと思った点
実際使ってみて、使いにくい点もありました。
①申請期間が短い
1次募集:2021年6月11日~7月12日
2次募集:2021年7月13日~8月12日
この間に申請しないといけません。
タイミングが合えばいいですが、上記2ヶ月にたまたまタイミングが合う人は稀です。
申請だけだからというかもしれませんが、ある程度構想がなければ申請すらできない内容になっています(申請画面の入力必須部分が書き込めません)。
そのためこの期間に申請できる人はラッキーと言えてしまうぐらいの申請期間の短さだと思います。
②事業実施期間が短い
申請期間だけでなく、事業実施期間も短いです。
例えば、 ①見積もり ⇒ ②発注 ⇒ ③検収 ⇒ ④請求 ⇒ ⑤支払 と合った場合、②~⑤を交付決定日以後に開始して、事業完了日前(2021年12月31日)に終わらせないといけません。
2次公募の交付決定は早くとも9月中旬ごろになりそうなので、事業完了日まで3ヶ月半になります。
上記①でお伝えしたように申請が通ることですらタイミングが難しいのに、さらに審査の末、交付決定を受ける必要があります。そのうえで、9月中旬~12月末日までにM&Aアドバイザリー契約をして、交渉して、クロージングの支払いまで行うというのは、大変なハードルだと感じました。
*なおこの補助金には、「事前着手の承認を受ける」という救済措置もありますので、タイミングが合わない人はそちらも調べることをおすすめします。
③原則、相見積もりが必要
補助金である以上、原資は税金です。したがって、お金を払うときは価格比較して安い方に発注しなさいというルールです。つまり、相見積もりが必要です。
しかし、M&Aは秘密保持が絶対のものであり、そこでしか売られていない案件も多いです。M&Aアドバイザーも専属契約をしているケースが多いです。
たとえば、A社の株式売買について、X氏のアドバイザーが専属契約になっているなどです。これでは、他のアドバイザーに助言のための見積もりを取ることはできても、安いからといって発注は不可能です。
そういう意味では、相見積もりを取れる人は少なくなり、難しいのではないかと感じます。
どうしても、相見積もり取得が難しい場合は、例外的に相見積もりを取らなくてもいい条件もついていますので、公募要領を確認ください。
④申請がオンライン
事業承継を考えている売り主さんは、基本的に高齢者が多いので、オンライン申請になると厳しいかもしれません。また、GビズID(gBizIDプライム)というものを持っていないとオンライン申請(jGrantsという補助金申請webサイトを利用します)ができません。ちなみに、GビズIDは補助金をはじめとするいろいろな行政との手続きで使えますので、まだ持っていない人は持っておかれるべきだと思います。2021年8月時点で取得に2週間ぐらいはかかっています。
GビズIDによる行政手続き
おまけ)事業承継・引継ぎ等補助金(事業承継トライアル)<ビジネスDDサービス&経営引継ぎ支援サービス>/バトンズ
私がM&Aアドバイザーとして認定を受けているバトンズさんでも補助金運営をしています。
私の契約先でも申請をしておりましたが、ワードに入力するぐらいの手間であり、1日で申請をしておりました。採択数は多くないですが、お得なパッケージなので紹介します。
以下は、まともに依頼すると総額300万円ほどかかるかもしれません。ですが、バトンズDDというお得にパッケージ化されたDDプランを使い、さらに補助金採択されれば、実質的に20万円ほどでできてしまう可能性のあるお得な補助金です。
補助金パッケージ内容
①バトンズDD:財務を中心としたデューデリジェンス。譲渡企業の、帳簿上の資産の実在性や簿外負債などを確認します。
②ビジネスDD:ビジネスモデルや組織体制などのデューデリジェンス。譲渡企業の、事業の強み弱みや従業員スキルなどを確認します。
③経営引継ぎ支援(PMI):引継ぎ時に必要な手続きや対応を網羅的にチェックし、またバトンズDD・ビジネスDDを基に、引継ぎ後の経営方針や成長のための施策を一緒に検討します。
いずれにせよ、昨年ぐらいからM&Aに実践レベルで活用できそうな補助金が出てきたことは画期的なことです。
昨年も今年も夏頃が申請期間となっています(来年以降は通年応募できるようになるかもしれないという話も聞いています。)。ぜひM&Aを考えている方は、ウォッチしておくといいでしょう。
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