元請け型の印刷会社会社の買収をお考えの方向けに、地方の名門の印刷会社のクリエイティブ支援の実情をお伝えします。
情報産業である印刷会社ですから、多くのデザインとクリエイティブを手掛けているイメージがあるかもしれません。特に、印刷業界では価格勝負を避けるため、デザインやクリエイティブ企画に長年にわたって勝機を見出してきた経緯があります。そのためか、地方の名門企業であればあるほどデザインとクリエイティブで儲かっていると感じてしまいがちです。しかし実際はそうでないケースの方が多く見受けられ、そのような企業を買収対象企業としたときに、知っておくべき一般的な実情があります。
その1:地方のクリエイターは何でも屋
企画デザインを行って付加価値高い印刷物制作やweb制作を行うには、多様な職種・技能が必要になってきます。企画・撮影・取材・コピーライティング・編集・デザイン・校正などがそれにあたります。都市部でこのような仕事を行う際は、しっかり分業化していて、ディレクター・カメラマン・コピーライター・デザイナーなどそれぞれの専門家が集いチームになって、最高のクリエイティブを実現しています。しかし、地方となると、1つの技能や職種では生計が成り立たず、すべてを1人で行っているケースすら多く見受けられます。よく兼任されているケースとして「カメラマン・取材・コピーライティング」「ディレクター・デザイナー」の組み合わせがあり、専門性を発揮できずにいることが多いです。幅広くできるというのは聞こえはいいですが、ここぞというときにノウハウも少なく、顧客から見てもどっちつかずという印象を与えてしまう懸念があります。
私の友人の東京の印刷会社の社長は、ある地方の人口4万人規模の市のシティーセールスのコンサルティングを行っています。地元のクリエイターでは上述のように実績と専門性が低いのでしょう。彼は、実績実力を示す前に、東京のコンサルタントというだけでブランド価値が上がってしまうと言います。地方のクリエイターは構造上、専門性が欠落しがちで、また忙殺されている実情を知っておくといいでしょう。その忙殺さから、経営権が変わったことを機に、キーマンが突然やめてしまうことも考えられなくはありません。
その2:地方ではクリエイティブな対価が軽視される
モノ余りの成熟社会で、良いものさえ作っていれば売れるという考えは難しく、デザインやクリエイティブの力で課題解決をしようという発想は大変重要です。下請け・レッドオーシャンなどと不平を言う前に、今こそアイデア・デザイン・開発・ブランディングという志向に切り替えることで大きく飛躍する可能性があります。しかしその必要性を理解している意思決定者は、地方には少ないように感じます。時間がよりゆったり流れ、競争も都市部ほど激しくないため、進化・発展のスピードが遅くなってしまうのでしょう。しかし、デジタル技術や通信の発達で、今や場所は関係ありません。スピード感をもって、変化を受け入れなくては、従来のやり方では戦っていけません。アフターコロナはデジタル化の進展のおかげで、地方でも少しずつクリエイティブに対しての対価を高く払う人が出てくるかもしれません。上記「その1」でお伝えしたように、クリエイティブの価値をわかっている人は東京のクリエイターやコンサルタントに発注しています。つまり、都市部のクリエイティブに強い買い手企業が地方に入っていくチャンスへと転じる可能性は十分あります。とにかく、現時点ではクリエイティブな対価は軽視されているが、今後重視されていく可能性があるという段階でしょう。この点もふまえながらM&Aを考えてみてはいかがでしょうか。
以上、クリエイティブなアプローチができるすばらしい印刷会社ではありますが、欠点もあるということをお伝えしてきました。もちろん、すべての会社がこの見解に当てはまるわけではありません。また、上記のような傾向があったとしても、悪い見立て促しているわけでもありません。対価が取れないからワンマンクリエイターでやるしかない、それで収益を上げているから良しとするという考えもあるでしょう。
とにかく、PMIに大きく影響しますから相手をよく知ることは本当に大切ですね。いいマッチングに向けて少しでもお役立ち情報になれば幸いです。
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